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腸内細菌叢を良くするとアレルギーが治る!?

最近の研究で、腸内細菌がアレルギー症状発症に深く関わっているという証拠が次々に明らかにされています。つまり腸内細菌叢(腸内細菌の集団で、お花畑に例えて、腸内フローラとも言います)が乱れて、善玉菌が減り、悪玉菌が増えるとアレルギーを発症するのではないかと考えられ始めています。アレルギーを抑える乳酸菌〇〇〇とか、時々テレビや雑誌で宣伝されているのを聞かれたことがあるのではないでしょうか。
実際、腸管内細菌叢の異常とアレルギー発症に関しては、花粉症の患者さんでは腸内細菌のフィーカリバクテリウム属の細菌が減少していることや食物アレルギーを発症する小児では、生後3か月時点での腸内細菌叢の多様性が低く、エンテロバクター属が多いいことが指摘されています。逆に、マウスを使った動物実験では、クロストリジウム属の腸内細菌を増やすと食物アレルギー発症を予防できる等多くの結果が蓄積されつつあり、将来的には食物アレルギーを抑える菌、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎を抑える菌を同定して販売するすることを目標として、プロバイオティクスは今、医学の最もホットな話題の1つとなっています。
なぜ腸内細菌の異常がアレルギーの発症を起こすのかという話を理解していただくために、簡単な免疫の話をします。まずアレルギー反応を引き起こすのは、リンパ球という白血球の一部です。私たちの体内には、生まれつき、免疫を強めるリンパ球と免疫が行き過ぎないように抑えるリンパ球があり、このバランスが取れていることで、私たちは重い感染症にかからず、ひどいアレルギーにも悩まされずに生きています。この免疫を抑える方のリンパ球をTreg(制御性T細胞、ティーレグ) と呼んでいます。つまりアレルギーを発症する人はTregが少ないため、免疫反応の抑制が効かずアレルギーを発症すると考えられます。逆にTregを増やすことができれば、アレルギーを抑えることができると考えられます。現在のところ、このTregを増やすのに関わっているのが、腸内細菌叢の中で酪酸(らくさん)を産生する酪酸菌と考えられています。酪酸菌によって腸内で作られた酪酸は、腸の粘膜を通過し、腸管内のリンパ組織に働き、Foxp3という遺伝子の発現が増加した結果、Tregが増加すると考えられています。よく耳にする乳酸菌ではなく、酪酸菌です。全身のリンパ球は循環していますので、腸管内で増えたTregは体中に循環し、花粉症やアトピー性皮膚炎、気管支喘息などの症状を抑制してくれると考えられます。
では酪酸菌をおなかの中で増やすにはどうしたらいいのでしょうか。酪酸菌を多く含む食材を食べ、酪酸菌のエサとなる食物繊維をたくさん取れば、腸内で酪酸菌を増やすことができます。酪酸菌を多く含む食物といえば、ぬか漬け、ナチュラルチーズ、納豆等です。酪酸菌のエサとなる食物繊維のうち、特に水溶性食物繊維が酪酸菌のエサとなりやすいといわれています。水溶性食物繊維を多く含む食品には、海藻(わかめ、めかぶ等)、穀類(オートミール、そば、ライ麦パン)、野菜(ゴボウ、納豆、アボガド、ニンジン)などです。その他、運動も酪酸菌を増やす効果がありますし、ヨーグルト等の乳酸菌も酪酸菌を増やす効果があります。しかし乳酸菌自体は通過菌と呼ばれ、乳酸菌を取っても腸内で増殖せず、すぐに便の中に出てしまうため毎日取り続けなければならないとされています。乳酸菌は毎日取ることが勧められるのは、このような理由からです。ヤクルトは毎日飲まないと効果はありません。
近年、小児の患者さんのうちでアレルギー疾患をもつ方の割合は急速に増加しています。
3月から5月の春先には、患者さんの約半分位がアレルギーがらみの症状で受診されることも稀ではなくなりました。今、私たちの食生活は肉食が多くなり、野菜摂取、海藻摂取が不足しています。アレルギーとはほぼ無縁であった私たちの父母の世代は、玄米を食べ、野菜を食べ、おやつといえば蒸したイモやイリコで、家で漬けたぬか漬けを食べ、今よりも確実に多くの発酵食品と食物繊維をたべていました。その頃は、アレルギーが健康上の問題になることは、ほとんどありませんでした。日本人は欧米人に比べて、酪酸によってTregが誘導されやすいとするデータもあるようです。うちの子はアレルギーだからしかたないとあきらめる前に、もう一度、食生活を見直して、薬に頼らず、アレルギーを自力で改善するようにトライしてみてはいかがでしょうか?

写真は、私が毎朝食べている、納豆+めかぶ+キムチ+米麹を混ぜた食べ物です。
納豆は納豆菌(酪酸産生菌の一種です)、めかぶは水溶性食物繊維を。キムチは乳酸菌を、米麹は麹菌を多く含んでいます。